tanojinの日記

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君たちはどう働くか(今野晴貴・2016・皓星社)を読んで

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自分は現在無職である。昨年の4月に新卒として入社し、今年の5月に退職した。そこはいわゆる「ブラック企業」で、見切りをつけて退職をした…という次第だ。

そんなわけで求職活動中なのだが、あまり動けていないのが現状だ。またブラック企業に入ってしまったらどうしよう…こんな思いはある。動くのがなかなか難しいので、とりあえず本屋の就職コーナーに行って出会ったのがこの本だ。

著者について

今野晴貴さんといえば、POSSEの代表の人だ。労働問題を取り扱うNPO法人で、テレビにもたまに出演する。また、「ブラック企業」という言葉を日本に定着させた人物でもある。

著作のうち「ブラック企業2」は読んだ。事例として取り上げられた中堅不動産会社の話はよく覚えている。洗脳研修と長時間労働が行われており、そのうち「どうしても眠い時は携帯でタイマーを5分セットし、トイレで寝る」という事例が紹介されていた。恐ろしい。

本の内容

さて内容だが、まずこの本は自己啓発目的に書かれたものではない。働く上での知識やルールを学ぶもの、言ってしまえば働くことについての「勉強」のための本だ。著者が強調されていることを引用すると、

 おもに中学生のみなさんが仕事や社会の仕組みを知ることで、社会に出てから賢く働けるような知恵を身につけてほしい

 である。そう、この本は中学生を対象にした本だ。ただし、高校生や大学生、社会人が読んでも役に立つことが書いてあるため、あくまで「中学生でも分かりやすいように書かれた本」だと思ってくれればよい。

この本で学べることを大まかに言えば、「働く意味」「働くルール」「アルバイト・就職先の見つけ方」「労働の現状」だ。この中から「働くルール」と「アルバイト・就職先の見つけ方」について取り上げよう。

働くルール

まず、働くルールというのは<労働法>のことだ。労働基準法とか労働組合法とか。多くの人が会社に雇われて働いている現代、労働者は経営者に使い潰されないように働く必要がある。その労働者を守るためのルールが労働法なのだが、これはあまり学校の勉強で習わない。せいぜい労働三法や労働基本権について学んで、「これからどのようなことに気をつけて働いていけばいいですか」的な記述問題を解いて終了だ。(※個人の偏見が入ってます)労働問題ばかりに時間をかけられないというのが社会の先生が思っている所だろうが…それはともかく、1つ問題を出してみよう。

 

「飲食店でアルバイト中にうっかり皿を割ってしまいました。1枚割ると500円給与から天引きされます。この罰金制度は違法でしょうか?」

 

答えは「違法」だ。詳しく知りたい人はアルバイト先での罰金、どう対処すればよいのか?(今野晴貴) - 個人 - Yahoo!ニュースなど読んでもらえれば。自分の前職でもこんな感じの罰金制度あったんですよね…みんな(本心はともかく)受け入れてたな…

もう一つ、覚えておかなければいけないのは労働者には「権利」があるということだ。これもここまでは学校で習うのだが、権利は行使しなければ効果がないこと、及び権利の使い方は習わない。残念ながら、自分は前職について何らかの権利を行使するつもりはないが、もし他の誰かがあの会社を訴えた時は手助けできればなー、と思っている。(他力本願)こんな考えになるのはどこまで権利が有効なのか分からないから。なので、権利の行使を考えた時は今野さんや労働法の専門家に一度尋ねた方がいいのだろう。なお、この本の末尾に「困ったときには、ここに連絡しよう!」というページがある。

アルバイト・就職先の見つけ方

今の自分が最も興味ある部分なのだが、どちらかといえば「アルバイトの見つけ方」の方が中心だ。就職については非正規問題についてや職場トラブルが主である。中学生に向けて書いてある部分もあるので仕方ない。

見つけ方といっても、それは「ブラック企業に入らない」方法だ。アルバイトの見つけ方で面白かったのが、「下見をして人がたくさん働いているか確認すること」という方法だ。もし人手不足であれば、働くメンバーは固定化されて辞めるのが難しくなってしまう。特に学生バイトは都合よく使われるので、それを防ぐために確認することは大切だ。

就職の場合、求人票と契約書で内容が違うことに気をつける、困ったら第三者に相談するなどなので、「ブラック企業に入らないにはこうすればいい!」ということが知りたい人には向いていない。あくまで「勉強」のために知識をつける本なので。

ただ「勉強」のための本であるということは、基礎がしっかり詰まった本だとも言い換えられる。働いていて訳が分からなくなった時に、落ち着いて自らの状態を見直すためのガイドブックにもなりえる。

総評

一から労働について学ぶ人(なのでメインは中学生~高校生)には最もオススメできる。少し話は逸れるが、今の中高生も「ブラック企業」という言葉は知っている人が多いと思う。「なんとなく働きたくない会社」という認識はあると思うが、「なぜそんな企業に入社してしまうのか、入ったらどうすればいいのか」まで説明できる人は(申し訳ないが)あまりいないと思う。決して悪い事ではないのだが、「ブラック企業」という言葉だけが流行ってしまってるなーと感じるところだ。労働はこれからの人生に絶対ついてくるものなので、もし不安があればこの本を是非読んでもらいたい。不安が無くても読んでもらいたい。

では、社会人にオススメできないかと言えば、そんなことは決してない。社会人には「手元に置いておくと安心できる本」といえる。繰り返しになるが、この本の末尾には困った時の連絡先が書いてある。「手助けしてくれる人の連絡先が書いてある」と思えば少し安心できるのではないだろうか。働くことについて基礎の部分から見つめ直すこともできる。その意味ではお役立ちの本だ。

自分は退職後に読んだので、読むべき時期を完全に間違えているが、それでも働くことを問い直すきっかけになった。特に労働法については「働くのなら学ぶべきだよな」と思えた。知らないままだと会社からいいように使われ続けるだけだし。次はどんな会社に入るかわからないが、気持ちを新たに頑張っていきたい。願わくは、この本で学んだことを行使しないような会社に入りたいものだ。